something more precious
08
バーンッ!!!
皇帝、皇后が自分の部屋へ帰るために広間をでた直後に、広間の扉が乱暴に開かれ、敵であるヒョウテイ国が侵入
してきた。
「よぉ!皇太子様。久しぶりやなぁ。」
「オシタリ・・・。」
敵の先頭に立ち、クニミツに話かけてきたのはヒョウテイ国の王子の側近であるユウシ・オシタリであった。
「皇帝陛下と皇后陛下はどこや?」
「此処にはおられない。何のようだ。」
「ん〜、ちょっとこの大陸を乗っ取らせてもらおうかと思おてな。おとなしく降伏する気ないか?」
「ない。」
「んなら力ずくでいくしかないな。・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
ふとオシタリが視線をクニミツから横にずらすと視界に入ったのはシュウスケとエイジと共にいたリョーマであった。
「おー!リョーマ姫やないか!なんでこんなとこにおるんや?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
オシタリの質問にリョーマは目つきを鋭くして無言でオシタリを睨んだ。
「まっ、ええわ。おーい、王子ー!」
そんなリョーマの視線を全く気にせず、入ってきた扉の向こうに向かって言った。
そこに現れたのは・・・
「何んだ、うるさいぞ。オシタリ。」
「アトベ・・・。」
ヒョウテイ国の王子であるケイゴ・アトベだった。
「ああ、テヅカ久しぶりだなぁ。」
「何しにきた。」
「皇帝陛下と皇后陛下に我がヒョウテイ国に位をゆずってもらいに来たのさ。」
「そんなことさせるわけにはいかない。」
「ふん。いずれこの大陸はヒョウテイ国の物になるんだ。それが早いか遅いかの違いだろ。」
「王子、王子。」
クニミツとアトベの話の途中で入ってきたのは先ほどアトベを呼んだオシタリであった。
「何だ、オシタリ。」
「ホレ、見てみぃ。エチゼン国のリョーマ姫様やで。」
そう言ってオシタリがリョーマのいる方向を指した。
「なんでこんなとこにいる、リョーマ。」
「気安く呼ばないでくれる?」
依然冷たい態度を変えずにリョーマは口を開いた。
「未来の后を何と呼ぼうが俺様の勝手だろ。」
「誰もあんたの后になるなんて言ってない。勝手なこと言わないでくれる?」
「俺様が決めたんだから后も同然だろ?」
「俺、あんたみたいな俺様大嫌いなんだけど。」
「そのうち俺様なしじゃ生きられなくなるぜ。」
「ちょっと、勝手なこと言わないでくれる?」
「ああん?」
アトベとリョーマの会話にシュウスケとエイジが口をはさんだ。
「今俺様とリョーマがしゃべってんだ。口をはさむな。」
「あんたこそ勝手なこと言わないでくれにゃい?」
「そうだよ。リョーちゃんはテヅカの后候補の1人なんだから!」
「なんだと?!」
「だから君がいくら喚いたって何にもならないんだよ。」
「本当か?!リョーマ!!」
「本人に聞いたら?」
「テヅカ!!どうなんだ!!」
「本当だ。神のお告げにおりリョーマ姫は俺の后候補に選ばれた。」
声を張り上げるアトベに比べてクニミツは冷静に答えた。
「くっ!・・・・・・・・リョーマ、候補はあと何人いる?」
「2人。」
「お前はこいつが好きなのか?」
「嫌い。」
ズキッ
リョーマの即答にクニミツは心が痛んだ。しかし、なぜだかわからなかった。
「?」
「よし。テヅカ!!勝負だ!!俺が勝ったらリョーマ以外の2人のどちらかを后にしろ!!リョーマは俺がもらう!!」
「ちょっ、ちょっと!!勝手に決めないでよ!!」
「問答無用!!!いくぞ!!テヅカ!!!!!」
アトベはリョーマの声も聞かずにテヅカへと切りかかった。
「やめろよ2人共!!俺、そんな約束してないからな!!!オイ!!!」
リョーマは2人を止めようと2人に近づいたが、オシタリによって阻まれた。
「すいませんねぇ。リョーマ姫。邪魔させるわけにはいかんのですよ。」
「リョーちゃん、ここは僕が引き受けるよ。」
「シュウスケ!!」
オシタリの前にシュウスケがリョーマを庇うように立ちはだかった。
「そんなこと言っていいん?おい、お前等、やっと出番やで。」
この広間に入ってきた時にオシタリの後ろにいた兵士にオシタリが声をかけた。
「おっせーよ!ユウシ!!いつまで続くのかと思ったぜ。」
「そう言うなってガクト。」
「やっとですね、シシドさん。」
「まったくだぜ。油断するなよ、チョウタロウ。」
「おい、ヒヨシ!お前実戦初めてだろ?あの姫さんお前相手しろよ。」
「はい、ムカヒさん。」
「カバジはジローを起こしぃ。」
「うす。」
「zzz・・・。」
「アクタガワさん、起きてください。戦闘です。」
「えー、戦闘ぉ〜。俺眠いよ〜。」
「この戦闘が終ったら寝さしたるから。」
「はーい。」
「やるねー。さすが王子。」
「ほら、タキも関心してんとやるで。」
「余所見してていいの、オシタリ。」
オシタリが自分の仲間たちにツッコミをしているとシュウスケが攻撃をしかけてきた。
「うわっ!卑怯やで!!」
「戦闘に卑怯も何もないよ。」
シュウスケ vs オシタリ
「俺、前からお前と戦いたかったんだよなー。勝負だ!キクマル!」
「受けてたってやるにゃー!!」
「覚悟しろ!!」
エイジ vs ガクト
「よろしくお願いします。」
「相手がオオトリの可能性100%・・・。」
「・・・・・・・・。」
イヌイ vs オオトリ
「お前が相手か・・・。」
「フシュ〜。」
カイドウ vs シシド
「オラオラ〜!!バーニング〜!!!俺の相手はお前かー!!カモーン!!」
「うす。」
カワムラ vs カバジ
「君やるそうだねー。」
「よろしく。」
オオイシ vs タキ
「ねぇ、ねぇ、君強いんだってぇ〜!!ちょー楽しみだCー!!」
「何なんすか?この人・・・。」
モモシロ vs ジロウ
「そこどく気ないわけ?」
「ないな。」
「じゃあ、強行突破するから。女だからって甘く見てると痛い目みるよ。」
「生意気な姫だ。」
リョーマ vs ヒヨシ
そして戦闘は開始された・・・・・・・・・・・・・・。
「あっ!!!!!!」
戦闘は長引き、日が丁度暮れ、月明かりが城に射した時、ひときわ高い声が響いた。そこにいる全員が声の主へ視
線を向けるとそこにはヒヨシと少し距離を置いたリョーマがいた。
「ヤバイ・・・・。今日は満月だ・・・・・・。」
「おちび?」
比較的近くにいたエイジがリョーマが呟いた独り言は聞こえなかったけど、いつもと違う様子のリョーマに声をかけ
た。するといきなりリョーマがバッとエイジを見て、しゃがみ、叫んだ。
「ヤダ!!見ないで!!お願い見ないで!!!!」
「お、おちび?」
エイジが不思議に思って声をかけた後、今度はエイジが叫んだ。
「おちび!!!!」
見ると、リョーマの髪の毛が黒から金へと変化していっていた。
全員が何も言えないでいるとさっきまで叫んでいたのが嘘のように静かにリョーマが立ち上がり顔を上げた。
「「「「「「「っっっ?!?!?!?!」」」」」」」
全員の息を呑んだ声が聞こえた。
リョーマの瞳は黒から青へと変っていた。

